移植
親知らずの移植
親知らずの移植とは
残念ながら大臼歯の抜歯が必要となった際に、条件がそろえば親知らずを移植する方法が選択できる場合があります.あまり馴染みがない治療かもしれませんが、特に若年者の方ではインプラントよりも望ましい場合があります.移植の歴史は実はインプラントよりも長く、世界中で多くの論文での報告もされています.当院では、条件がそろえば積極的に親知らずの移植を行っております.
どのような時に移植を検討するか?
残念ながら大臼歯の抜歯が必要となった際に,お口の中に機能しておらず,かつ傷付けずに抜歯が可能な親知らずが残っている方が対象となります.若年者の方が予後が良いことが報告されております.インプラント治療と比較して生存率が劣るため,慎重に検討する必要があります.また,糖尿病などの全身的な因子,喫煙等の生活習慣にも影響を受けます.インプラント治療と比較して様々なメリットもありますので,もし抜歯が必要となった場合に親知らずが残っていれば,必ず検討すべき選択肢であると考えます.
移植の特徴
移植のメリット
・歯根膜細胞(根の表面の細胞)の力で骨の再生や維持ができる場合があること
・ブリッジと比較して、一本の歯を一本の根で支えることができること
・インプラントと比較して、矯正治療で動かすことができること
・ご自身の歯を有効活用して治療が行えること
・保険適応であり、費用が安価であること
移植のデメリット
・手術箇所が二箇所になること
・処置が複雑であり、報告されている生存率がインプラントよりも劣ること
実際の移植治療
診査診断
まずはお口の中全体を見て、どのように抜いた後の治療を行うか、他の検討できる選択肢も含めて十分に話し合いを行います.その上で移植を行うことが決まった場合はCT撮影を行い、移植する歯の大きさ、骨の幅、高さ、神経までの距離などを測定します.
CTデータから移植歯のレプリカ作成
CTデータから3Dデータを作成し、移植する歯のレプリカを製作します.レプリカで確認しながら骨の形を修正することで移植までの時間の大幅な短縮および生存率の向上が見込めます.まだ新しい手法ですが,用いることのメリットは絶大です.また,難易度が高い処置の場合は予め骨のモデルも製作し,手術のシュミレーションを行う場合もあります.
抜歯→移植
上記の移植歯のレプリカで確認を行いながら慎重に骨の形を修正していきます.形の修正が終わった後に極力傷つけないように優しく親知らずを抜歯し,移植を行います.移植した後は糸やワイヤーで固定を行い,レントゲン写真で確認を行います.術後は1-2週間後に抜糸を行います.
根管治療
移植を行った後は神経の血流が途切れて壊死してしまうため、根管治療を行います.根管治療は,清潔な状態での処置が非常に重要なため,通常の根管治療と同様に全ての処置でラバーダム防湿を行います.
被せ物の製作
・間接法修復
移植から3-4ヶ月程度でレントゲン撮影を行い、治癒傾向を確認してから仮歯を製作します.仮歯で機能させて問題なければ、最終的な被せ物を製作します.
治療期間は概ね4-6ヶ月(7-10回)程度です.但し,期間,回数は状態によって異なります.
他の治療方法との比較
移植はその性質上、インプラント治療と比較されることが多い方法です.インプラント治療と比較してもメリット、デメリットがあり、総合的に考えてどちらの治療が望ましいかを決める必要があると考えます.
例えば,移植した歯の生存率はある報告では5年で90%,10年で70%,15年で55%程度であるのに対して,インプラント治療の生存率は10年でも20年でも90%以上と報告されています.しかし,インプラントの40年以上の生存率は未だ報告されていないため,インプラントの適応を遅らせるという意味でも20代前後の若年者の場合は,移植が望ましい場合も多く見られます.さらに移植は条件によっては保険適応が可能で費用も抑えることができます.
なべしま歯科医院では、移植、インプラント,ブリッジのいずれも行っており、適応可能な選択肢については画像を用いてわかりやすく説明します.しっかりと話し合い、納得していただいた上で治療方法を選択して頂くことが最も重要と考えております.